経営者保証ガイドラインのメリット
経営者保証ガイドラインと破産・民事再生の比較
経営者保証ガイドライン | 破産 | 民事再生 | |
---|---|---|---|
手続の種類 | 私的整理 | 法的整理 | 法的整理 |
手続の期間(目安) | 半年程度 | 半年から1年程度 | 半年程度 |
残せる資産(上限) | 回収見込額の増加額 | 99万円 | 上限のルールなし |
信用情報 | 登録されない | 登録される | 登録される |
1 会社の事業譲渡との相性が抜群です。
会社は事業譲渡により事業承継を図りつつ,経営者保証ガイドラインにより,経営者は保証債務の免除を受けることができます。
2 経営者が自己破産を避けられる。
長年誠実に会社経営に励み,その最後に自己破産ではあまりにつらい。自己破産を避けたいニーズに応えることができます。
3 残存資産として,自由財産99万円に加えて一定期間の生計費を残すことができる。
個人が破産した場合は「自由財産」として99万円を上限に現預金等を残すことが認められますが,経営者保証ガイドラインを利用する場合,自由財産99万円に加えて,一定期間の生計費に相当する現預金を残すことができます。
なお,華美でない自宅等も残すことができるとされていますが,担保権が設定されている自宅をそのまま保持することは難しいのが実情です。
生計費について
次のとおり,1ヶ月あたりの生計費を33万円とし,①のように,経営者の年齢と雇用保険の給付期間を目安により算出される金額を上限として,②の事情も総合的に勘案して決定されます。
例えば,経営者の方が60歳の場合,雇用保険の給付期間は最大で240日間分となるので,33万円×8カ月分の264万円が上乗せされて,合計で最大363万円まで残存資産を保有することができます(さらに,②の事情も考慮される場合があります。)。
①1ヶ月あたりの生計費33万円(民事執行法施行令)×給付月数(雇用保険の給付期間を目安とする)
雇用保険の給付期間
保証人の年齢 | 給付期間 |
---|---|
30歳未満 | 90日~180日 |
30歳以上35歳未満 | 90日~240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日~270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日~330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日~240日 |
② 個別具体的な事情
1 | 保証人の保証履行能力や保証債務の従前の履行状況 |
---|---|
2 | 主たる債務が不履行に至った経緯等に対する経営者たる保証人の帰責性 |
3 | 経営者たる保証人の経営資質,信頼性 |
4 | 経営者たる保証人が主たる債務者の事業再生,事業清算に着手した時期等が事業の再生計画等に与える影響 |
経営者保証ガイドラインの利用条件
経営者保証ガイドラインによる保証債務の整理を行うためには,一定の条件を満す必要があります。
1 対象となる債権について
交渉の対象となる債権者は金融機関のみです(信用保証協会,債権回収会社等も含みます。)。経営者自身でクレジット会社等から借入れをしている場合には,これを対象に含めることは困難です。
2 保証人が中小企業の経営者及びこれに準ずる者であること
中小企業の経営者,オーナーとして実質的に経営権を有している者,会社の事業に従事する配偶者等が利用することができます。
3 主たる債務者の債務整理手続について
主たる債務者である会社について,再生手続や特別清算等の法的な手続等の申立てをしていること又は手続を完了していることが必要です。金融機関も会社を放置したままでは,経営者の保証債務を処理できないからです。
4 すべての金融機関の同意が得られて初めて成立する
すべての金融機関の同意があって初めて成立します。経営者保証ガイドラインによる債務整理は私的整理だからです。主たる債務者の資産及び債務並びに保証人の資産及び保証債務の状況を総合的に考慮して,主たる債務及び保証債務の破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど,金融機関にとって経済合理性があると判断されることが必要です。
5 保証人について不誠実な行為がないこと
経営者個人についても,不誠実な行為がないことが重要です。すべての金融機関の同意を得るものであり,そのためには,金融機関との調整が必要不可欠となります。この段階で,経営者個人の不誠実な行為(破産法上の免責不許可事由に該当する行為等)があれば,金融機関の同意は期待できません。もちろん,ものには程度やそれぞれの事情があります。また,過去に不誠実な行為があったとしても,善後策を誠実に講じて挽回できる場合もあるので,私たちに率直にご相談ください。